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【医師監修】コロナ後遺症による味覚障害を克服する5つの治療法と自宅ケア

コロナ後遺症による味覚障害で「何を食べても美味しくない」「匂いがわからない」と苦しんでいませんか?
本記事では、コロナ後遺症で味覚障害がなぜ起こるのか、どのくらい続くのかという基礎知識から、医師監修のもと、薬物療法・漢方・専門的リハビリ・栄養療法・鍼灸治療といった5つの治療法を科学的根拠に基づいて解説します。
さらに、自宅でできるケアや専門医受診の目安も紹介します。読後には、回復までの現実的な道筋が描けるはずです。

この記事を書いた人

鍼灸院LapisThree代表:秋山貴史

鍼灸院Lapis Three代表 秋山貴志

鍼灸院Lapis Three代表で総合診療医の秋山貴志です。

現役医師の観点から皆さんの健康に役立つ情報と、鍼灸治療に関する情報を発信していきます。

総合診療内科医 Dr.AKIYAMA
在宅支援クリニック 院長

目次

1. コロナ後遺症による味覚障害で悩むあなたへ

新型コロナ感染後、「味がしない」「味が薄い」「変な味がする」と感じる方が増えています。
ここで大切なのは、私たちが日常で「味」と呼んでいる多くが**風味(味覚+嗅覚)**だという点です。実際には嗅覚障害が主因で「味がしない」と感じていることも少なくありません。

食事を美味しく感じられないつらさは栄養状態や気分にも影響しますが、適切な評価と対処で改善が期待できます。
この記事では、メカニズムの整理から標準治療・セルフケアまで、実践的にまとめました。


あなたの主な悩みとこの記事で得られる解決策

  • 食事が美味しくない・食欲がわかない
     → 「風味」と「味覚・嗅覚」の違いを理解し、食事と栄養管理のコツを具体化。
  • いつまで続くのか不安
     → 回復までの目安を数値で解説。過度に悲観しないための見通しを提示。
  • 自宅でできるケアを知りたい
     → 嗅覚トレーニングや睡眠・ストレス対策などを安全に実践。
  • どこに相談すればよいか分からない
     → 耳鼻咽喉科・後遺症外来など受診の流れと準備事項を紹介。

2. コロナ後遺症 味覚障害の基礎知識

2.1 味覚障害とは?症状の種類と特徴

味覚障害とは、味の感じ方に異常が生じる状態です。主なタイプは以下のとおりです。

  • 味覚減退(味覚鈍麻):味が薄く感じられる
  • 味覚消失(無味覚症):味を感じない
  • 異味症・自発性異常味覚:本来と異なる味、または何も食べていないのに不快な味がする
  • 解離性味覚障害:五味のうち特定の味だけが分かりにくい

コロナ後遺症では嗅覚障害を併発しやすく、風味全体の低下を「味覚の異常」と感じるケースが多く見られます。


2.2 なぜコロナ後遺症で味覚障害が起こるのか

複数の要因が関係しています。

  • ウイルスの直接影響(嗅細胞・味覚細胞への作用)
  • 全身性炎症(サイトカインによる機能低下)
  • 嗅覚障害との連動(風味の低下として表れる)
  • ストレス・自律神経の乱れ(中枢処理の変化や唾液分泌低下)

2.3 味覚障害はいつまで続く?回復までの期間

個人差はありますが、多くは数週間〜数か月で改善します。
近年の報告では、1年後には味覚低下はほぼ解消する例が多く、嗅覚低下は一部で持続する傾向があるとされています。
2年以上続くケースもありますが、時間とともに改善する方が大多数です。


2.4 味覚と嗅覚の密接な関係

コーヒーの「香り」は嗅覚、苦味は味覚——両者が統合されて「風味」になります。
コロナ後遺症では嗅覚の回復が味覚の改善に直結することが多く、嗅覚評価と訓練が鍵になります。


3. 医師が解説 コロナ後遺症 味覚障害を克服する5つの治療法

まずは耳鼻咽喉科で評価を受け、嗅覚トレーニングなどの標準治療を中心に、症状や体質に応じて治療を組み合わせましょう。自己判断での薬剤使用は避けてください。


3.1 薬物療法によるアプローチ

  • 亜鉛製剤:欠乏や特発性味覚障害で改善が示唆。過量摂取は銅欠乏などのリスク。
  • ステロイド:嗅覚障害で専門医管理下に短期投与されることがあります。
  • ビタミンB群・C:神経機能や抗酸化をサポート。
  • 唾液分泌促進薬:ドライマウスを改善し、味覚物質の到達性を高めます。

3.2 漢方薬の活用

体質や症状に合わせて以下を検討。
補中益気湯・十全大補湯・六君子湯・半夏厚朴湯など。
継続的な体調改善・ストレス緩和を目的とし、併用薬や副作用は医師に確認が必要です。


3.3 専門的な味覚・嗅覚リハビリテーション

  • 嗅覚トレーニング(標準治療)
     レモン・ユーカリ・バラ・クローブなど4種の香りを1日2回、12週以上(できれば3〜6か月)継続。
  • 味覚トレーニング
     五味を少量ずつ意識的に味わう再学習法。
  • 口腔感覚刺激
     舌ブラッシングや咀嚼刺激で唾液分泌を促進。

安全で実践性が高い第一選択とされています。


3.4 栄養療法とサプリメントの利用

食事を基本に、亜鉛・鉄・ビタミンB群・Cなどをバランスよく摂取します。

主な食品例:

  • 亜鉛:牡蠣・牛赤身・卵・ナッツ
  • 鉄:レバー・赤身肉・あさり
  • ビタミンB群:豚肉・魚・豆類
  • ビタミンC:柑橘・ブロッコリー・パプリカ

3.5 最新の研究動向(研究段階)

再生医療・神経刺激(TMS/TENS)・遺伝子治療などが研究中。
現時点では標準治療ではなく、耳鼻咽喉科での評価と嗅覚トレーニングを優先します。


3.6 鍼灸治療による改善(補完療法)

鍼灸は血流改善・ストレス軽減を通じて症状サポートを目指す補完療法です。
効果には個人差がありますが、医療機関での評価や標準治療と併用する前提で検討しましょう。
国家資格の有無・説明の丁寧さ・医療連携の有無を確認すると安心です。


4. 自宅でできる味覚障害のケア方法

4.1 食事の工夫と栄養管理

  • 香りを活用(ハーブ・スパイス・柑橘など)
  • 食感を楽しむ(パリパリ・シャキシャキなど)
  • 温度差をつけて味覚刺激を増す
  • 酸味・うま味を取り入れる(だし・きのこ・トマト)
  • 彩りを意識して視覚的に食欲を促す

※刺激の強すぎる香辛料は控えめに。


4.2 自宅での嗅覚トレーニング

  • 手順:4種の香りを各10〜20秒、朝夕1回ずつ/12週以上継続
  • コツ:香りの名称や記憶を思い浮かべながら嗅ぐ
  • 記録:主観スコアを日誌化して継続をサポート

4.3 ストレス軽減と休息の重要性

  • 音楽・読書・入浴などのリラックス習慣
  • マインドフルネス呼吸法
  • 軽い運動(ウォーキング・ヨガなど)
  • 睡眠環境の最適化

4.4 口腔ケアの徹底

  • 歯磨き:毎食後にフッ素入りで丁寧に
  • 舌磨き:やさしく、強擦を避ける
  • うがい:水や生理食塩水で保湿中心に
  • ドライマウス対策:唾液腺マッサージ・水分補給・保湿剤活用

5. 味覚障害で困ったら 専門医への受診の目安と相談先

5.1 受診すべき症状の目安

  • 症状が2週間以上続く
  • 食欲低下・体重減少・生活の質が下がっている
  • 異味症や自発性異常味覚が強い
  • 嗅覚障害を伴う/不安・抑うつが強い

5.2 受診先と流れ

  • 初期は耳鼻咽喉科で評価(嗅覚・味覚検査など)
  • 改善が乏しい場合は専門外来・コロナ後遺症外来へ紹介
  • 受診時は以下を整理
     発症時期・症状変化・内服薬・既往・他の後遺症

基本的な流れ

  1. 耳鼻咽喉科で評価
  2. 嗅覚トレーニング+鼻炎治療などの介入
  3. 栄養・睡眠・ストレス対策を並行
  4. 改善が乏しい場合は専門外来へ

5.3 鍼灸院の受診について

鍼灸は補完的に検討可能。
国家資格・説明の丁寧さ・医療連携体制を確認し、主治医と連携して行うのが安心です。


5.4 初期検査の目安

  • 血液:亜鉛・銅・鉄指標・ビタミンB12・TSH・HbA1c
  • 薬剤性の確認(ACE阻害薬など)
  • 口腔評価:ドライマウス・舌・歯周状態
  • レッドフラッグ:嚥下障害・顔面神経麻痺・片麻痺 → 早期受診を

6. まとめ

  • コロナ後遺症の「味がしない」は嗅覚障害による風味低下が主因のことが多い
  • 嗅覚トレーニングが標準治療で、数週間〜数か月で改善する例が多数
  • 亜鉛・漢方・栄養療法・鍼灸などは補助的選択肢
  • 自己判断ではなく、耳鼻咽喉科など専門医の指導を受けることが大切

一人で悩まず、専門家と相談しながら、自分に合ったペースで回復を目指しましょう。

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