こんにちは!今回は「四十肩なんてまだ早い!」と悩んでいた40代男性の症例をご紹介します。
肩の痛みを抱えながらも「自分はまだ若いし、四十肩なんて…」と受け入れられずにいた彼が、鍼灸治療でどのように改善していったのか?その経過を詳しくお伝えします!
患者背景と初診時の状態
この患者さんは40代前半の男性。デスクワーク中心の仕事をされており、普段の運動習慣はあまりないそうです。
2か月ほど前から右肩の違和感を感じ始め、次第に痛みへと変化。特に通勤電車でつり革を持つのが辛いとのことで、「これってまさか四十肩?」と不安になりながらも、認めたくない様子でした。
肩の可動域をチェックすると、腕を前に上げる(屈曲)・横に上げる(外転)の動作が制限されており、痛みも伴う状態。
明らかに肩関節周囲炎(いわゆる四十肩)の初期症状でした。
施術内容と経過
【1回目】可動域の改善を目的に施術開始
まずは肩周りの緊張を緩めるために、肩井(けんせい)、天宗(てんそう)、曲池(きょくち)などのツボに鍼を施術。
さらに肩甲骨周囲の筋肉(棘下筋・小円筋など)にアプローチし、肩の動きを改善する狙いを持ちました。
→ 施術直後、「少し軽くなった気がする」との感想。ただし、可動域の大きな変化はなし。
【2回目】痛みの軽減が実感できるように
1回目の施術後、翌日は少しだるさを感じたものの、3日後には痛みが軽減していたとのこと。
この回では、肩甲骨の動きをさらにスムーズにするため、肩甲下筋と前鋸筋にもアプローチ。
→ 施術後、「つり革を持つときの痛みが最初より楽になってきた」と実感。
【3回目】日常動作がスムーズに
2回目の施術後からさらに動かしやすくなり、朝の着替えも楽になったとのこと。
この回では、肩周りだけでなく、姿勢改善のために腰や背中のツボにもアプローチ。肩の負担を減らす目的です。
→ 施術後、「まだ完全ではないけど、つり革を持つときの痛みはかなり軽減。もう少し通いたい」とのこと。
考察:なぜこの患者さんの肩は痛くなったのか? そして、鍼灸で炎症が落ち着いた理由
今回のケースでは、以下の要因が複合的に絡み合い、肩の痛みを引き起こしたと考えられます。
1. 肩関節周囲の筋緊張と血流低下による炎症の発生
デスクワーク中心の生活で肩甲骨周囲の筋肉(棘下筋・小円筋・肩甲下筋など)が過度に緊張し、可動域が低下。
また、運動不足により血流が滞ることで代謝産物(老廃物)が蓄積し、炎症が引き起こされる悪循環に陥っていたと考えられます。
加えて、患者さんには無意識に肩をすくめる癖があり、僧帽筋上部の緊張が強く見られました。
この状態では、肩甲骨の動きが制限され、結果として肩関節への負担が増大し、四十肩の発症につながったと推測されます。
2. 鍼灸施術による炎症鎮静のメカニズム
鍼灸治療が炎症を鎮め、症状を改善した理由には、以下のような作用が関与しています。
✅ 血流促進作用
鍼を刺すことで微細な刺激が加わり、局所の血流が増加します。
血液の循環が良くなることで、酸素や栄養が供給され、老廃物や炎症物質(プロスタグランジンやブラジキニンなど)の排出が促進され、炎症が軽減されていきます。
✅ 筋緊張の緩和
肩甲骨周囲や上腕部の関連筋(棘下筋・小円筋・三角筋など)に鍼を施すことで、筋紡錘や腱紡錘を介した神経反射が起こり、筋肉の過剰な緊張が抑制されました。
これにより、肩の可動域が改善し、痛みの緩和につながりました。
✅ 抗炎症作用(神経ペプチドの調整)
鍼の刺激によって、神経伝達物質(CGRPやサブスタンスP)の放出が調整され、異常な炎症反応が抑制されると考えられています。
特に肩関節周囲炎では、神経の過敏化が痛みを悪化させる要因となるため、鍼刺激による**神経モジュレーション(調整作用)**が有効に働いた可能性があります。
✅ 脳内鎮痛物質(エンドルフィン・セロトニン)の分泌促進
鍼刺激により、脳内でエンドルフィンやセロトニンといった鎮痛作用のある神経伝達物質が分泌されます。
これにより、痛みの閾値(痛みを感じるレベル)が上昇し、「同じ動作をしても痛みを感じにくくなる」状態が作られました。
3. 鍼灸による自律神経調整と炎症制御
患者さんは仕事のストレスや運動不足により、交感神経が優位になっている傾向がありました。
交感神経の緊張が続くと、血管が収縮し、筋肉の緊張が強まり、結果的に炎症を助長する状態になります。
鍼灸治療によって副交感神経が優位になり、血流の改善だけでなく、ストレスによる神経系の過剰な興奮が抑制され、結果的に炎症の鎮静化に寄与したと考えられます。
総括:鍼灸治療の多面的な作用が四十肩の回復を促した
今回の患者さんは、肩関節周囲炎(四十肩)の初期段階であり、鍼灸施術による血流改善・筋緊張緩和・神経調整が効果的に働きました。
また、痛みが軽減したことで肩を動かしやすくなり、自然と可動域が回復。痛みの悪循環を断ち切ることができました。
このように、鍼灸は単なる「痛みの治療」ではなく、血流・神経・筋肉・自律神経など、多角的に働きかけることで、炎症を鎮め、根本からの回復をサポートするものです。
まとめと今後の方針
この患者さんは、デスクワーク中心の生活や肩の無意識な緊張によって、血流低下と筋肉の硬直が進行し、炎症が発生したと考えられます。
鍼灸治療によって血流が改善し、筋肉の緊張が緩和されることで、炎症物質の排出が促進され、痛みが軽減しました。さらに、神経調整作用や自律神経のバランス改善により、炎症の鎮静化が進み、回復がスムーズになりました。
現在、この患者さんは週1回の継続治療を行いながら、肩の動きを維持するためのストレッチや姿勢改善にも取り組んでいます。
「四十肩だから仕方ない」と諦めるのではなく、適切なケアを行うことで、痛みは十分に改善できるものです。
肩の痛みでお悩みの方は、「放置せずに早めのケアを!」がポイントです。
日常生活に支障が出る前に、ぜひ鍼灸の力を試してみてください!