こんにちは!鍼灸院Lapis Threeです
今回は膝の痛みによる鍼灸治療の事例を1つご紹介します
問診内容
患者は、夫の車椅子を押しながら坂道を上った際に膝の内側にズキズキする痛みを感じたと訴えました。特に左膝が辛く、ただし痺れは伴わないとのことでした。少し休むと痛みが軽減する傾向がありました。
導入時の評価では、マックマレーテスト陰性であり、靭帯の損傷も確認されなかったため、半月板損傷や靭帯損傷の疑いは低いと判断しました。
※マックマレーテストとは膝関節の半月板損傷の評価に用いられる徒手検査です。特に内側および外側半月板の損傷を確認するために行われ、整形外科やリハビリテーションの場でよく使用されます。検査中に クリック音やポップ音が聞こえる。または 膝関節に痛みがある。これらの症状がある場合、半月板損傷が疑われます。

評価
急性の炎症による痛みの可能性を疑いました。坂道を押し上がる動作によって膝周囲の筋・腱が過度に緊張し、一時的な炎症を引き起こしたと考えられます。
治療方針
鍼灸治療により抗炎症効果を期待し、以下の経穴(ツボ)に施術を行いました。
- 内膝眼(ないしつがん)
- 外膝眼(がいしつがん)
- 梁丘(りょうきゅう)
- 血海(けっかい)
- 鶴頂(かくちょう)
これらの経穴に10分間の置鍼を行い、局所の血流促進と鎮痛作用を図りました。
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経過
・1回目の施術後:膝の痛みが明らかに軽減。歩行時の不快感も大幅に減少しました。
・2回目の施術後:痛みが完全に消失し、患者の動作もスムーズになりました。術後の経過観察でも痛みの再発はありませんでした。
考察
本症例は、急性の膝痛に対して鍼灸治療が短期間で症状改善に寄与したケースです。今回選定した経穴は膝周囲の血流促進や炎症軽減に効果があるとされるポイントであり、これが早期回復につながった可能性があります。

こちらの図は鍼を刺したときに起こる軸索反射の図です。
膝に鍼をすると、知覚神経末端が刺激され、軸索反射が起こります。この反射によって、知覚神経からサブスタンスPやCGRPといった神経ペプチドが放出され、血管が拡張して血流が増加します。
その結果、酸素や栄養が膝関節周囲に供給され、老廃物の除去が促進されることで炎症や痛みが軽減します。また、筋肉の緊張緩和による関節の可動域改善も期待できます。このように、軸索反射を介した局所の血行促進と神経調節が膝症状の軽快に寄与します。
痛みが短期間で消失したことから、靭帯や半月板など深部組織の損傷ではなく、筋肉・腱の炎症や過負荷が主な原因だったことが示唆されます。
再発予防のポイント
術後の再発予防として以下の対策が有効です。
- 無理のない範囲でのストレッチを行い膝周囲の筋肉を柔軟に保つ
- 長時間の無理な動作を避け、適度な休憩を取る
- 基礎筋力の強化を通じて膝への負担を軽減する
膝の健康は日常生活の質に大きく影響します。適切なセルフケアを実施し、快適な生活を維持するためのサポートを続けてまいります。
引き続き、症例報告や鍼灸治療の有用性についても発信してまいります。