こんにちは、鍼灸院Lapis Threeです。
今回は「耳鳴り」と「めまい」に悩む40代女性の症例をご紹介します。
患者さんの背景
今回の患者さん（Aさん・40代女性）は、数ヶ月前から「キーン」という耳鳴りと、ふわふわとした浮遊感のあるめまいを感じるようになりました。特に疲れが溜まったときやストレスを感じたときに症状が強くなり、仕事にも支障が出るようになってしまいました。
病院で検査を受けたところ、「特に異常はなく、ストレスが原因ではないか」との診断を受け、様子を見るように言われました。しかし、改善の兆しが見えず、不安になり当院を受診されました。
初診時の状態
- 耳鳴り：常に軽く聞こえ、疲れたときに強くなる
- めまい：日常的にあり、特に寝起きや疲労時に悪化
- 首や肩のこりが強く、頭が重だるい
- 仕事がデスクワーク中心で、目の疲れも強い
- 睡眠が浅く、夜中に目が覚めることが多い
施術方針
Aさんの症状から、「気血の巡りの滞り」と「自律神経の乱れ」が関係していると考えました。
特に「耳鳴り」は東洋医学では「腎」や「肝」の機能低下とも関連があり、ストレスや疲労の蓄積が影響すると考えられます。
そこで、以下の方針で施術を行いました。
- 首肩の緊張を緩め、血流を改善（天柱、風池、肩井など）
- 自律神経を整え、ストレスの影響を軽減（内関、神門など）
- 耳の周囲の循環を良くする（聴宮、翳風など）
- 腎や肝の働きを整える（太谿、太衝など）
施術経過（全6回）
〈1回目〉
施術後すぐに「首が軽くなった」との実感があり、耳鳴りも一時的に軽減。めまいは大きな変化なし。
〈2～3回目〉
耳鳴りの頻度がやや減少。めまいは相変わらずあるが、以前ほど強くない。肩こりが楽になり、寝つきが少し良くなる。
〈4回目〉
「気づいたら耳鳴りがない時間があった」とのこと。めまいも軽減し、ふわふわ感が減る。朝の目覚めが良くなった。
〈5～6回目〉
耳鳴りの頻度がかなり減り、めまいもほぼ感じなくなる。肩こりも軽く、仕事の集中力が上がったと実感。
考察
今回のケースでは、「首肩の緊張の緩和」と「自律神経の調整」が大きなポイントでした。
1. 首肩の緊張を緩めることで血流改善
耳鳴りやめまいは、内耳や脳への血流不足が関与していることが多いです。特に、首や肩の筋緊張が強いと、椎骨動脈の循環が悪化し、内耳や脳幹への血流が不足しやすくなります。鍼灸により首肩の筋肉を緩めることで、血流が改善し、耳鳴りやめまいの症状が軽減したと考えられます。
鎖骨下動脈→椎骨動脈→前下小脳動脈→内耳動脈→前庭動脈、蝸牛動脈、前庭蝸牛動脈に枝分かれ
2. 自律神経を整える作用
耳鳴りやめまいは、自律神経の乱れとも深く関係しています。交感神経が過剰に働くと、血管が収縮し、内耳や脳への血流が低下します。鍼灸には副交感神経を優位にし、リラックスを促す作用があるため、血流の改善とともに神経の過敏性を抑える効果が期待できます。
3. 耳周囲の循環促進
耳周辺のツボ（翳風、聴宮など）への鍼刺激は、局所の血流を改善し、耳の機能を整えるのに有効です。また、経絡を通じて内耳の働きを調整し、症状の緩和に寄与すると考えられます。
4. 腎・肝の機能調整
東洋医学では、耳は「腎」と関係が深いとされ、腎の機能が低下すると耳鳴りが起こりやすいと考えられています。また、ストレスによる「肝気の滞り」も耳鳴りやめまいを引き起こす要因となります。今回、腎や肝の機能を整えるツボを用いたことで、体全体のバランスが改善し、症状が緩和されたと推測できます。
5. 睡眠の質向上による回復力の向上
Aさんは初診時、睡眠が浅く、夜中に目が覚めることが多い状態でした。鍼灸施術によって自律神経が整ったことで、睡眠の質が向上し、体の回復力が高まりました。その結果、耳鳴りやめまいの症状が軽減したと考えられます。
総括
今回の症例では、鍼灸施術により首肩の緊張が緩和され、自律神経が整い、血流が改善したことで、耳鳴りやめまいが軽減しました。さらに、東洋医学的な視点から腎や肝の働きを整えたことも、症状改善に寄与したと考えられます。
耳鳴りやめまいは、単なる耳の問題だけでなく、全身のバランスと関わっているため、鍼灸によるアプローチが有効であることが示唆されました。
まとめ
今回のAさんのように、病院で「異常なし」と言われても、症状に悩まれる方は少なくありません。特にストレスや疲労が関係している場合、鍼灸は効果的なアプローチの一つです。
「ずっとこのまま治らないのでは…？」と不安を抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの症状に合った施術で、より快適な毎日を取り戻すお手伝いをいたします！
