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飛蚊症×ビジュアルスノウに対する鍼灸アプローチ
今回は、30代女性の患者様が抱える「飛蚊症」と「ビジュアルスノウ(Visual Snow)」に対して鍼灸治療を行い、初回施術後に1週間の改善が見られた症例を紹介します。
視覚の違和感は日常生活の質を大きく下げますが、明確な治療法が少ない分、鍼灸によるアプローチが注目されつつあります。
■ 患者情報
- 年齢・性別:30代女性
- 主訴:飛蚊症、ビジュアルスノウ
- 既往:特記事項なし
- 治療期間:現在継続中
- 治療回数:2回(初回後1週間は症状が軽減)
■ 初診時の状態
患者様は約半年前から飛蚊症が増え、同時に視界に細かいノイズが走るような「ビジュアルスノウ」が出現。眼科では異常なしと診断され、経過観察のみで明確な改善は得られず、当院を受診されました。
- 飛蚊症:黒い影や糸くず状の浮遊物が常に視野に入る
- ビジュアルスノウ:薄暗い場所でノイズが強く、集中力低下・眼精疲労も併発
- 首肩の緊張が強く、後頭下筋群に圧痛
- 自律神経の乱れを示唆する睡眠の質低下
■ 病態の考察
1. 飛蚊症と眼循環
飛蚊症は硝子体の濁りにより発生しますが、眼球の循環不全や酸化ストレスが関与するケースもあり、全身の血流改善は症状緩和の一助となる可能性があります。
2. ビジュアルスノウのメカニズム
ビジュアルスノウは明確な原因不明とされますが、近年では
- 視覚野の過敏化(神経興奮の亢進)
- 後頭部〜脳幹周囲の血流・神経調整
が関与する可能性が指摘されています。
3. 鍼灸で重要となるポイント
鍼灸では以下の点を重視してアプローチしました。
- 後頭下筋群の緊張緩和 → 視神経・脳循環への影響
- 三叉神経系の調整 → 頭部感覚の過敏化を抑制
- 自律神経調整 → 神経興奮の鎮静化
- 全身の血流改善 → 眼循環のサポート
眼症状であっても、全身調整が効果に直結する点が特徴です。
■ 治療内容
1回目・2回目とも同様の方針で施術を実施。
● 使用した主な経穴
- 陽白 – 太陽:低周波通電刺激
→ 目の周囲の血流改善、三叉神経ルートの調整 - 足三里:低周波通電刺激
→ 自律神経調整、全身循環改善 - 風池・天柱
→ 後頭下筋群の緊張緩和 - 合谷、太衝 など
→ 頭部の血流調整、気の巡りを促す
● 治療の狙い
- 視覚過敏の鎮静
- 眼球および後頭部の血流改善
- 自律神経バランスの正常化
- 頸部筋緊張の緩和による視神経負担軽減
■ 経過
● 1回目施術後
- 飛蚊症の見え方が軽減
- ビジュアルスノウのノイズ感が弱まり「視界がクリアになった」
- 効果は約1週間持続
- 眼精疲労が大きく改善
● 2回目施術後
- 再び視界のノイズが和らぎ、飛蚊症も気になりにくい
- 効果の持続性向上の可能性あり
- 引き続き施術継続中
■ 考察
本症例では、
「視覚野の過敏化」+「後頭部〜眼周囲の循環不全」+「自律神経の乱れ」
が複合的に症状の増悪に関与していた可能性が考えられます。
鍼灸治療により、
- 後頭部筋緊張の緩和
- 頭部の血流改善
- 三叉神経ルートへのアプローチ
- 自律神経バランスの調整
が行われたことで、視覚症状に良い反応が得られたと推察されます。
ビジュアルスノウは西洋医学で確立された治療が少ないため、今回のように症状緩和・生活の質向上を目的とした鍼灸は有効な選択肢になり得ます。
■ まとめ
- ビジュアルスノウと飛蚊症に対し、鍼灸治療で症状軽減が認められた
- 初回から1週間持続したことは、神経系・血流系の反応性が良いことを示唆
- 現在も継続治療中でさらなる改善が期待できる
- 明確な治療手段が少ない領域において、鍼灸は有効なアプローチとなり得る

