現代社会において、パソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスを長時間使用することによる眼精疲労に悩む方が増えています。また、効果的な解決策が明確になっていないことも患者をさらに困らせています。本記事では、眼精疲労の主な原因や症状を丁寧に解説し、東洋医学の一つである鍼灸がどのように現代人の目の健康をサポートできるのかをご紹介します。鍼灸は血流の改善や自律神経の調整、さらには神経回路のトラブルを改善することで、多くの方にその効果が認められています。最近では、その効果のメカニズムが徐々に解明されつつあります。鍼灸が眼精疲労の治療においてどのように効果を発揮するのか、医学的なメカニズムを交えながら解説します。さらに、セルフケアで眼精疲労を軽減する方法や、鍼灸治療を実際に受けた方の体験談も含め、全体像を網羅的にお伝えします。この記事を読むことで、眼精疲労の正しい知識と、より良い対処法を理解し、目のケアに役立てることができるでしょう。
この記事を書いた人

鍼灸院Lapis Three代表 秋山貴志
1.眼精疲労とは何か
眼精疲労とは、目を酷使することで目の疲れや不快感が一時的ではなく持続する状態を指します。単なる目の疲れ(疲れ目)とは異なり、全身的な不調を引き起こす場合もあります。主な症状としては以下が挙げられます。
カテゴリ | 具体的な症状 |
---|---|
目の症状 | 目の痛み、乾燥感、かすみ目、視力低下、まぶしさを感じやすい |
全身の症状 | 頭痛、肩こり、首の痛み、吐き気、集中力低下 |
心理的な影響 | イライラ感、不安感、鬱症状 |
これらの要因が単独、あるいは複合的に作用して眼精疲労を引き起こします。特に現代社会では、パソコンやスマートフォンの普及により、VDT症候群による眼精疲労が増加傾向にあります。
1.2 現代社会における眼精疲労を引き起こす原因
現代社会では生活習慣やテクノロジーの進化に伴い、眼精疲労を引き起こす要因が増加しています。その一部を以下に解説します。
1.2.1 デジタルデバイスの長時間使用
スマートフォンやパソコン、タブレットといったデジタルデバイスの普及は、眼精疲労の主要因とされています。これにより、目のピント調節を行う筋肉「毛様体筋」が疲労しやすくなります。
さらに、ブルーライトの過剰な曝露が目の負担を増大させ、長時間のスクリーン使用がドライアイや深い疲労感を引き起こします。ブルーライトに関しては、現時点の研究データでは目の疲れや視力低下に関係がないという結論になっていますが、実際の現場ではブルーライトカットのデバイスを使用することで目の疲れが大幅に軽減されるケースも散見されます。
1.2.2 ドライアイ
ドライアイとは、涙液の分泌量が不足したり、蒸発しやすくなったりすることで目が乾燥する状態を指します。現代人の多くはエアコンなどの空調設備やデジタルデバイスの使用が原因で、この症状に悩まされています。
1.2.3 屈折異常(遠視、老視、強度近視、乱視、不同視)
眼鏡やコンタクトレンズを正しく使わず、屈折異常が適切に矯正されない場合、無意識に目の焦点を合わせようとすることで負担が増えます。その結果として、眼精疲労や頭痛、肩こりなどに繋がることがあります。
1.2.4 度数の合っていないメガネ・コンタクトレンズ
矯正視力の度数が合っていない眼鏡やコンタクトレンズを使用すると、目の調節機能に過度な負担がかかります。そのため、眼精疲労の原因となる場合があります。定期的に検眼を行い、自身の視力に合った矯正器具を選ぶことが重要です。
1.2.5 緑内障、黄斑変性症や眼底出血後の視覚異常
目の病気が原因で起こる視覚異常も眼精疲労を引き起こす大きな要因です。特に緑内障や黄斑変性症の患者は、視力が徐々に低下するため、日常の物を見る行為が負担となることがあります。
1.2.6 副鼻腔炎(慢性副鼻腔炎・蓄膿症)
副鼻腔炎による鼻づまりなどが原因で、眼精疲労が誘発されることがあります。これは鼻と目の隣接関係によるものです。目の奥に不快感を覚える場合、副鼻腔炎が根本原因であることが少なくありません。
1.2.7 生理前症候群
女性特有のホルモンバランスの変化も眼精疲労を悪化させる原因となります。生理前に目の乾燥感や疲労感が強くなる場合は、ホルモンの影響が考えられます。
1.2.8 ストレスや睡眠不足の影響
睡眠不足や慢性的なストレスは、目の回復を妨げるだけでなく、血流を悪化させ、眼精疲労を引き起こします。十分な休息を取ることの大切さがここからも分かります。
1.2.9 姿勢の悪さと血流不足
悪い姿勢での長時間作業も眼精疲労を強める大きな要因です。特に猫背になることで、眼の周囲や首回りの血流が低下し、目に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。
以上のように、現代社会において眼精疲労の原因は多岐にわたります。これらを改善する一つの方法として、鍼灸治療が注目されています。次章では鍼灸そのものについて詳しく説明します。
2.鍼灸とは何か?
鍼灸の基本的な仕組みと起源について
鍼灸は日本をはじめ、世界中で広く普及している施術法です。この治療法は、細い鍼を皮膚や筋肉に刺したり、温熱刺激を加えることで、身体の自然な治癒力を高めることを目的としています。歴史的には、中国古代の医学書『黄帝内経』に詳しく記載されており、2000年以上にわたる伝統を持つ療法です。
鍼(はり)は非常に細いステンレス製の針を使用し、身体全体ではなく特定の経穴(ツボ)を刺激することが特徴です。一方、灸(きゅう)は艾(もぐさ)という乾燥させたヨモギの葉を燃焼させ、その熱をツボに伝えることで効果を発揮します。このような伝統的手法に加え、現代では科学的な研究に基づく新しい施術法も広がっています。
2.1 現代医学における鍼灸の理解
近年、鍼灸の効果やそのメカニズムが西洋医学的な観点から解明されつつあります。例えば、2000年以降、世界中で鍼灸に関する研究や論文が急増しており、その結果、鍼灸が身体に与える影響について科学的なエビデンスが積み上げられています。以下に現代医学的な視点から注目されている点を挙げます。
2.2 神経科学の進歩と鍼灸
鍼灸は、ツボを刺激することで末梢神経を介して中枢神経系に信号を送ります。この信号が脳に伝わると、痛みを抑制するエンドルフィンやセロトニンなどの神経伝達物質が分泌されることが分かっています。これにより、痛みやストレスを軽減し、身体全体の調子を整える効果が得られるのです。
2.3 血流改善と炎症抑制
研究によれば、鍼灸は血流を改善し、炎症を抑制する作用を持つことが確認されています。特に、目の疲れや肩こり、腰痛といった慢性的な症状において、血流促進が症状の改善に大きく寄与しています。また、免疫系への影響も注目されており、鍼灸が自己治癒力を高める一因とされています。
2.4 自律神経の調整
現代社会ではストレスによる自律神経の乱れがさまざまな健康問題を引き起こしています。鍼灸は副交感神経を優位にすることでリラクゼーション効果を促し、不眠やストレス性の症状に対しても効果を発揮します。例えば、眼精疲労に関する研究では、目の周囲のツボ(例:「睛明(せいめい)」や「攅竹(さんちく)」)を刺激することで、目の血流が改善し、疲労が軽減することが確認されています。
2.5 鍼灸の臨床的応用
以下に、現代医学の観点から効果が確認されている具体例を示します。
カテゴリ | 具体的な例 効果 |
---|---|
筋肉の緊張緩和 | 目の周りや肩の筋肉 血流改善、疲労回復 |
自律神経の調整 | ストレス性の症状や不眠 リラックス効果、ストレス軽減 |
目の血行促進 | 睛明・攅竹・承泣などのツボ 視力低下の抑制、疲れ目対策 |
炎症抑制 | 関節痛や筋肉痛 痛みの軽減、回復促進 |
これらの効果は、単なる一時的な不快感の緩和にとどまらず、慢性的な症状の根本的な解消にも寄与します。そのため、鍼灸は現代医学と連携し、複雑化する健康問題に対する包括的な治療法として注目されています。
3.なぜ鍼灸が眼精疲労に効果的と言われるのか?
3.1 鍼灸の視点から見る眼精疲労のメカニズム
鍼灸治療は、現代医学の視点からも眼精疲労に効果があるとされています。その理由は、全身の血流改善や神経系への作用を通じて、目の筋肉や周囲組織の疲労を軽減する点にあります。
特に注目すべきは、後頭下筋群への直接的なアプローチです。後頭下筋群は”第2の眼筋”とも呼ばれ、物を注視するときに目と連動して動く筋肉です。この筋肉の疲労は眼精疲労や頭痛の原因となるケースが多く、体表から2.5cmと深い部位に位置しているため、マッサージや整体では刺激が難しい部位です。しかし、鍼灸ではこの深部の筋肉に直接刺激を与えることが可能であり、三叉神経脊髄路核や頸髄C3と関連する後頭下筋群の疲労を軽減することで、目の疲労や随伴する頭痛を改善します。
さらに、鍼灸は炎症を抑える物質の分泌を促し、神経伝達系を通じて痛みや不快感を軽減することが研究によって示されています。このような作用により、鍼灸は眼精疲労の根本的な原因にアプローチします。
3.2 血流改善や自律神経の調整の重要性
目は非常に多くの血管が集まる部位であり、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により血流が滞りやすくなります。この血流不足は酸素不足を招き、目の疲労感や痛みの原因になります。鍼灸では、目の周囲や頭部、首肩にあるツボを適切に刺激することで血液循環を促進します。これにより、目に酸素や栄養分が十分に供給され、眼精疲労を根本から改善します。
また、自律神経のバランス調整も鍼灸の重要な効果の一つです。過度なストレスや不規則な生活により自律神経が乱れると、交感神経が優位になり眼精疲労が悪化します。鍼灸ではツボ刺激を通じて上頚神経節を間接的に刺激し、交感神経と副交感神経のバランスを整えます。これにより、目の不快感や眼瞼の重さといった症状が改善されます。
3.3 ツボ刺激がもたらすリラクゼーション効果
鍼灸で使用されるツボは目の周辺だけでなく、全身に及びます。目の血流を改善する直接的な効果に加え、全身のツボを整えることでリラクゼーション効果が得られます。施術中に副交感神経が活性化されることで、心身がリラックス状態になり、目の疲労感が軽減されるのです。
また、鍼灸では体性自律神経反射を介して涙腺の分泌を促進し、ドライアイを改善します。さらに、毛様体筋の機能を向上させることで、ピント調節機能を改善し、眼精疲労を予防します。
3.4 主な眼精疲労緩和のツボ

引用:日本経済新聞
ツボ名 | 部位・位置 | 期待される効果 | 押し方 |
---|---|---|---|
晴明(せいめい) | 目頭近く、鼻根部のくぼみ | 目の充血緩和、視覚の改善 | 人差し指と親指で軽く押しながら円を描くように5秒間刺激。これを3回繰り返す。 |
攅竹(さんちく) | 後頭部、髪の生え際の外側 | 血流改善、肩こり緩和 | 両手の親指で5秒間押し、ゆっくり離す。これを3回繰り返す。 |
太陽(たいよう) | 眉尻と目尻の間のくぼみ | 目の疲れ解消、リラクゼーション | 人差し指で5秒間軽く押し、離す。リラックスした状態で3回行う。引用:日本経済新聞 |
これらのツボは、患者の症状や原因に応じて使い分けられます。鍼灸師が最適なツボを選定し、適切な刺激を与えることで、眼精疲労の効果的な改善が期待できます。
3.5 眼房水の循環改善と緑内障への効果
鍼灸は眼房水の循環を改善することで、緑内障の状態を改善する効果も期待されています。眼房水の適切な流れを促進することで、眼圧を低下させる効果があるため、緑内障の進行を防ぐ可能性があります。これにより、鍼灸は視覚の健康維持に重要な役割を果たしています。
鍼灸は、眼精疲労の根本原因に対処するだけでなく、血流改善、自律神経の調整、後頭下筋群への深部アプローチなど、さまざまな作用を通じて目の健康をサポートします。これにより、現代のデジタル社会で増加する目の疲れや不快感に対して有効な治療法として注目されています。
4.鍼灸治療の流れと注意点
4.1 初回診察と問診の流れ
鍼灸治療を受ける際には、まず初回の診察と問診が行われます。初回の問診では、患者の健康状態や生活習慣、抱えている症状について詳しくヒアリングされます。眼精疲労がある場合には、眼の使い方や日常的な生活の中での負担についても具体的に確認します。
例えば、デジタルデバイスの使用時間、就寝時間や睡眠の質、また食生活やストレスの有無も重要な情報となります。同時に、東洋医学特有のアプローチである脈診や舌診、腹診などが用いられ、身体全体の状態が把握されます。
これらの情報をもとに、その患者に合わせた施術方針を決定するため、初回の診察と問診は非常に重要なプロセスです。
4.2 実際の施術の流れと所要時間
診察後に鍼灸治療が開始されます。目の疲れに対する施術では、凝りやすい筋肉や効果が期待できるツボに鍼やお灸を行います。また、微弱電流を流すことでさらに高い効果を狙います。
施術時間は通常20分〜40分程度です。患者さんにリラックスしてもらうため、施術中はゆったりとした音楽が流される場合もあります。鍼灸施術が初めての方でも、不安を和らげるために、施術内容や使用する鍼が清潔なものであることについて説明を受けます。
4.3 鍼灸を受ける際の注意点とリスク
鍼灸の施術を受ける際には、以下の注意点を理解したうえで受療することが推奨されます。
4.3.1 体調が悪いときに避ける理由
体調が悪い場合や発熱している場合には、鍼灸施術を避けましょう。施術によって身体の気や血を動かすことで、体調をさらに崩す可能性があるためです。また、妊娠中の方は、事前にしっかり相談することが必要です。
4.3.2 衛生面に気をつけた鍼灸院の選び方
施術を受ける鍼灸院は、衛生面に注意を払った信頼できる場所を選ぶことが重要です。一目で衛生管理が徹底されているかどうかを見極めるのが難しい場合もあるため、直接相談したり口コミを確認するとよいでしょう。
また、鍼灸院の選び方については信頼できる情報源も参考にしてください。たとえば以下のリンク先から、施術院の選び方についてより詳細な情報を確認できます:公益社団法人日本鍼灸師会
5.鍼灸以外でできる眼精疲労へのセルフケア
5.1 目を労わるための生活習慣の見直し
日々の生活習慣には、眼精疲労を悪化させる要素が多く含まれています。まず、十分な睡眠を確保することが基本です。目を酷使しないことや適度な休息を取ることで、目の疲労を和らげることができます。睡眠時には部屋を暗くして、画面や強い光の刺激を避けるように心がけましょう。
また、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用を避けることも重要です。さらに、目に負担がかかりやすい姿勢が眼精疲労の原因となることも多いため、正しい姿勢での作業を心がけてください。
目の健康を保つためには、規則正しい食事が欠かせません。一般的に、ビタミンA(レチノールやベータカロチン)、ビタミンC、ルテイン、亜鉛などが目に良いとされています。これらは、ニンジンやホウレンソウ、カボチャ、ブルーベリーなどの食品に豊富に含まれています。
しかし、近年の研究では、動脈硬化を防ぐ食べ物が目の健康にも重要な役割を果たすことが注目されています。特に、オメガ3脂肪酸やEPA、DHAが含まれる食品は、目の血管の健康をサポートし、酸素や栄養分を効率よく目に届ける手助けをします。これらの栄養素は、サバやイワシ、サーモンなどの青魚や亜麻仁油、チアシードに含まれています。
さらに、オメガ3脂肪酸は炎症を抑える作用があり、眼精疲労に伴う炎症の軽減にも寄与します。EPAやDHAは、網膜の健康を保ち、目の機能維持に欠かせない成分とされています。規則正しい食事とこれらの栄養素を組み合わせることで、鍼灸治療の効果をさらに高めることが期待できます。
5.2 デスクワーク中にできる簡単なセルフケア
デスクワーク中に眼精疲労を軽減するためには、適切な休憩とツボ押しが効果的です。一般的に目の運動が紹介されることがありますが、過剰な眼球運動は目の疲労を悪化させたり、網膜剥離などのリスクを高める可能性があります。そのため、安全で効果的なセルフケアとして以下の方法を推奨します。
休憩の方法:20-20-20ルール
「20-20-20ルール」は、デスクワーク中の適切な休憩を促す方法として広く推奨されています。
このルールでは、以下のように休憩を取ります:
1.20分ごとに作業を中断する。
2.20フィート(約6メートル)先を見る。
3.20秒間そのまま遠くを見続ける。
ツボ押しのすすめ:眼精疲労に効くツボ3選
ツボ押しの際の注意点:痛みを感じない程度の強さで、リラックスした状態で行うことが重要です。
詳しくは3.4 主な眼精疲労緩和のツボを参照してください。
5.3 アイマスクや温める方法を活用する
目の疲れを癒す効果的な手段として、ホットアイマスクや目元を温める方法があります。ホットアイマスクを使用する最大の理由は、マイボーム腺からの油分の分泌を促進するためです。マイボーム腺は、目の涙に必要な油分を供給する役割を担っており、この油分が不足するとドライアイの原因となります。温めることで油分が溶け、分泌されやすくなるため、ドライアイの改善に効果的です。
さらに、ホットアイマスクにはリラックス効果や目の周囲の血流促進効果もあります。温めることで目の周囲の筋肉がほぐれ、血行が促進されるため、眼精疲労の軽減や緊張の緩和が期待できます。また、香り付きのアロマタイプのアイマスクを使用することで、より高いリラックス効果を得ることができます。
使用方法
- 市販のホットアイマスク: 例えば、花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」などは、就寝前に5〜10分程度目元を温めるだけで効果を発揮します。
- 自宅で手軽にできる方法: 清潔なタオルを水で濡らし、電子レンジで適温に温めて目に当てる方法があります。この際、熱すぎないように注意してください。
- 冷温交互療法: 温めたタオルで5分間目元を温めた後、冷たいタオルで1分間冷やすことで、血行促進とリフレッシュ効果が期待できます。
ポイント
適温に注意し、火傷のリスクを避けましょう。
ホットアイマスクや温める方法を日常に取り入れることで、目の健康を保つとともに、リラックスした時間を過ごすことができます。
温める時間は5〜10分程度が目安です。
アロマの香り付きアイマスクを選ぶと、精神的なリラックス効果が向上します。
6.目の疲れと自律神経の乱れによる悪循環
6.1 改善を実感するまでの期間と効果
眼精疲労や目の不調は、単なる違和感ではなく仕事の生産性を低下させ、経済的損失をもたらす深刻な問題です。特に、プレゼンティーズム(出勤しているが健康問題によりパフォーマンスが低下している状態)による影響は甚大であり、日本国内の推計では、年間約2兆円もの経済損失を引き起こしていると報告されています。
また、1人あたり週4.6時間の作業効率を失っているというデータもあり、これは月に18時間、年間約216時間もの損失に相当します。
このような状況を考慮すると、眼精疲労を放置することは、単に「目の疲れ」の問題にとどまらず、時間的にも金銭的にも大きな損失を生むことになります。
そのため、できるだけ早期に対策を講じ、症状が軽いうちに改善することが重要です。
6.1.1 鍼灸による改善例
鍼灸は即効性があり、1回目の施術から効果を実感するケースが多いのが特徴です。
さらに、回数を重ねることで症状の根本改善が期待できるため、症状が強い場合は週1回の施術を推奨します。その方が治りが早く、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
① 週1回の施術(症状が強い方に推奨)
- 対象者: デスクワーク中心の30代女性(1日8時間以上PC作業)
- 症状: 目の奥の重さ、肩こり、作業効率の低下
- 経過:
1回目: 施術後、目の奥の圧迫感が軽減し、仕事中の疲労感が減少。
2回目: 目の乾燥感が軽減し、視界がクリアになり、作業効率が向上。
3回目: 肩こりの改善が進み、疲れが翌日に持ち越されにくくなる。
4回目: 目の疲れを感じる頻度が減少し、集中力が向上。作業効率が20%以上向上。

② 2週に1回の施術(症状が軽度な方向け)
- 対象者: 40代男性、ITエンジニア
- 症状: 目のかすみ、首のこり、軽度の疲労感
- 経過:
1回目: 施術後、目のかすみがやや改善し、首の緊張感が和らぐ。
2回目: 目の疲れを感じる時間が短くなり、夜の目の痛みが減少。
3回目: 仕事中の目の違和感がほぼ解消し、首の可動域も向上。
4回目: 目と首の不調がほぼ解消し、長時間の作業でも疲れにくくなる。

「目の疲れはそのうち回復する」と思いがちですが、放置すると症状が慢性化し、回復に時間がかかるようになります。特に、プレゼンティーズムによる週4.6時間の損失を考えれば、症状を放置することのリスクは大きいと言えます。鍼灸治療は、即効性がありながら、継続することでより根本的な改善が可能です。
「目が疲れて仕事に集中できない」「肩こりや首のこりも気になる」「PC作業後に視界がぼやける」と感じている方は、できるだけ早く適切なケアを始めましょう。
7.まとめ
眼精疲労は、スマートフォンやパソコンの長時間使用、睡眠不足、ストレスなど、現代社会で多くの人が抱える問題です。これらの原因に対し、鍼灸は西洋医学と東洋医学の両方の視点から効果的なアプローチを提供します。
鍼灸では、ツボ刺激による血流促進、自律神経の調整、後頭下筋群への深部アプローチなどを通じて、目の疲労や関連する頭痛、肩こりを緩和します。また、マイボーム腺の機能をサポートすることでドライアイを改善し、眼精疲労の根本的な原因に働きかけます。
さらに、日常的なセルフケアとの併用が重要です。例えば、20-20-20ルールを活用した適切な休憩や、ホットアイマスクを使用して目元を温める方法は、血流を改善し、リラクゼーション効果を高めるだけでなく、目の健康を維持する助けとなります。加えて、眼精疲労に効果的なツボ(晴明、攅竹、太陽)を適切に刺激することで、自宅でも簡単にケアを行うことができます。
鍼灸を受ける際には、信頼できる衛生管理が徹底された鍼灸院を選び、自身の体調に合わせて施術を受けることが大切です。今回の記事が、眼精疲労の原因やその改善方法についての理解を深め、日常生活における目のケアの参考となれば幸いです。
Lapis Threeでは、眼精疲労の治療において、目の周りや首肩の筋肉の緊張をほぐすことに加え、心のケアにも重点を置いています。自律神経を整える施術を通じて、目の疲れだけでなく、精神的なリラクゼーションを提供し、総合的な健康をサポートします。
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