はじめに
眼精疲労は単なる「目の疲れ」ではなく、吐き気や頭痛、めまい、自律神経症状にまでつながることがあります。今回ご紹介するのは、紙媒体やデジタルを見るだけで強い吐き気や嘔吐を伴い、日常生活に大きな支障をきたしていた患者さんの症例です。
症例の概要 30代男性 デスクワーク
- 主訴:紙やスマホ、パソコンなどを見た際の強い吐き気・頭痛・嘔吐
- 随伴症状:首肩こり、食欲低下、睡眠障害、うつ傾向
- 目標:趣味や仕事に少しずつ復帰できるようになること
治療経過
1回目(6/21)
強い吐き気と頭痛があり、実際に嘔吐もしてしまう状態。首肩のコリが顕著で、睡眠は浅く、精神的にも落ち込みが強い。
➡ 三叉神経の感作を抑え、交感神経を鎮める治療を開始。
2回目(6/29)
施術後3日ほどで「仕事がしやすくなった」「3分程度なら本を読める」と改善の兆し。
3〜5回目(7/3〜7/13)
改善と悪化を繰り返しながらも、少しずつ「作業できる時間が延びた」「紙媒体は厳しいが、以前より我慢できる」など変化。
ただし体重減少や食欲低下も見られ、精神的・身体的な負担は大きい時期。
6回目(7/19)
吐き気が落ち着き始め、紙媒体も少しなら読めるように。抗うつ薬の内服も併用され、8月半ばまで休職することに。
7〜8回目(7/27〜8/3)
頭痛や吐き気はさらに出にくくなる。目頭の圧迫感は残るが、眼鏡の新調なども並行し、視覚環境を整え始めた。
9回目(8/17)
「スマホの確認ができるようになった」「食欲が戻ってきた」と大きな改善。眼球使用困難症との診断も受け、視覚特性に合った眼鏡を使用開始。
10回目(8/24)
「前より良くなってきている」「お菓子を食べる余裕も出てきた」と日常生活に変化。瞬きの回数も増え、眼の機能が少しずつ安定してきた様子。
考察
この症例は、強度の眼精疲労が自律神経症状(吐き気・頭痛・食欲低下)にまで波及していたケースです。鍼灸治療によって三叉神経の感作を抑え、自律神経のバランスを整えていくことで、少しずつ症状が軽快していきました。
途中で増悪や体調の波も見られましたが、**「仕事がしやすくなった」「本を読める」「食欲が戻った」**など、生活の質が段階的に改善していく経過は非常に印象的でした。
まとめ
眼精疲労がただの「疲れ目」で済まないケースも多くあります。今回の患者さんのように、吐き気や頭痛などの全身症状にまで影響することもあり、適切な治療や生活習慣の調整が不可欠です。
鍼灸治療は、神経や自律神経系へのアプローチを通じて、**「症状を和らげ、少しずつ日常生活に戻っていけるようにする」**サポートとなり得ます。

👉 強い眼精疲労や吐き気・頭痛でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。